研究課題/領域番号 |
19650073
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
我妻 広明 独立行政法人理化学研究所, 創発知能ダイナミクス研究チーム, 研究員 (60392180)
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研究分担者 |
山口 陽子 独立行政法人理化学研究所, 創発知能ダイナミクス研究チーム, チームリーダー (00158122)
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キーワード | 脳型知能 / 小型無線ロボット / 海馬シータリズム / 位相コード / 実時間シミュレーター / 視覚認識 / ロボットハンド / 粒子法 |
研究概要 |
本研究では、変化する環境で状況を認識し行動する文脈依存的な情報の生成過程に注目し、神経回路モデル実時間シミュレーターを使ってロボット実験・数理解析を進め、創発的な行動決定の情報処理過程を解明することを目的とする。我々は神経細胞集団のリズム活動に注目した海馬シータ位相コードと呼ばれる計算論を提案し、環境空間を探索し行動決定するロボット実験を進めている。昨年は、神経回路モデルの実時間シミュレーターを開発した。行動体験の記憶形成とその記憶を用いて行動決定する基本回路をロボットシステムに実装することで位相コードが即時的な行動判断に寄与する基本的性質を調べた。昨年はロボットの行動は空間認知のための移動に限定されたが、本年度はそのリアルタイム性を活かしつつも複雑な認知と様々な行動選択ができるよう、感覚入力と運動出力の回路設計と実験に取り組んだ。第一に、感覚入力として移動中のロボットカメラの映像から物体認識を得ること、海馬の記憶に必要な程度に単純化することを核に、視覚のリアルタイム動作アルゴリズムを開発した。これは特許申請として準備している。第二に、空間を移動しながら物体を操作することができるロボットハンドを取り付け、一連の動作の時系列を環境のフィードバックに合わせてタイミングを調整することで、操作失敗のない運動出力回路を設計した。これらは、海馬シータ位相コードの神経回路に繋げることで、状況に合わせて臨機応変な認識と行動選択を生み出すことが期待される。最後に、様々な脳の回路を追加することで実時間シミュレーターの処理速度が低下し、リアルタイム性を失うことを避けるため、従来常微分方程式の数値演算を行っていた記述を簡便化し、回路の特性を保ちつつ高速化を図る方式を開発した。神経回路を粒子系シミュレーションに置き換える方法を新たに提案し、今後脳の回路のシミュレーターとして有用かどうかを検証する。
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