研究概要 |
グリシンは,脳幹や脊髄における主要な抑制性神経伝達物質として,神経の電位活動の制御に加えて,運動,呼吸,感覚情報処理など脳の機能を構築する上で重要な役割を果たしている。また,小胞型GABAトランスポーター(VGAT)とグリシン、トランスポーター2(GlyT2)とは,グリシン作動性神経伝達に不可欠な分子である。VGATは,グリシンのシナプス小胞への貯蔵を担う。一方,GlyT2はグリシンをシナプス間隙からの除去と再取込みを担っており,グリシン作動性ニューロンに局在するのでグリシン作動性ニューロンのマーカー蛋白として利用される。本研究では,in vivoおよびin vitroにおけるグリシン作動性神経伝達の役割を明らかにする目的で,グリシン作動性ニューロン特異的に VGAT をノックアウトしたマウス(グリシン作動性神経伝達遮断マウス)の作出を目指した。具体的には,グリシン作動性ニューロン特異的にCre rec、mbinaseが発現するGlyT2-Creノックインマウスを作成し,条件付きVGATノックアウトマウス(VGAT-10xPマウス)と交配することにより作出することにした。VGAT-loxPマウスは既に作成しており,十分繁殖させた。GlyT2-Creノックインマウスに関しては,相同組み換えを利用した遺伝子標的法でGlyT2のエクソン2にCre recombinaseをノックインした胚性幹細胞を40クローン取得していた。キメラマウス作成のために,6クローンの胚性幹細胞をマウス8細胞期胚に導入した。しかし,まだキメラ率の高いマウスは得ていない。今後は,キメラ率の高いマウスを得るために,残りのクローンの胚性幹細胞についても検討する。また,グリシン作動性神経伝達遮断マウスを形態学的に同定するためには,in situhybridization法が有用である。そのプローブとして,VGATのcRNAを合成し,準備した。
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