色盲の人が混同する光の色はCIExy色度図の平面上の1直線上に並ぶことが知られているが、この理論を人間が実社会で接する色のほとんどを占める、明度情報Yを加味した「物体の表面で反射した光の色」(物体色)に拡張するため、様々な色覚の被験者が「似ている」と感じる色をYxy三次元色空間上にプロットした。この結果、このような色の座標を結んだ混同線は、xy平面での方向に応じてY軸方向には複雑な曲線を描くことが分かった。 さらに、もとの色のXYZ値に行列変換を行って新たな色X'Y'Z'を作り、上記の「似たように見える色」がほぼ同一の色座標値に変換されるような色覚シミュレーション計算の精密化を行った。 同種の計算を行うソフトウェアは従来から存在したが、多くの色領域で変換精度に難があった。行列変換式のパラメーターを系統的に変化させながら、多数の被験者で実験を繰り返すことによって、パソコン画面で表示可能なAdobe RGB領域の非常に広い範囲で変換がうまく成立するような計算式を完成させた。 また、実際にどのように異なる色ならば「見分けやすい」と感じられるのかを調べるため、印刷・塗装関連の業界標準となっている2種類の色票セットを用いて、見やすい色の組み合わせを作成する作業を開始した。今年度は、まず1500-2500色ある元の色票から、100色程度の第一次候補色を選ぶまでの作業を完了した。
|