哺乳類大脳新皮質は興奮性(Glutamate)神経細胞と抑制(GABA)神経細胞により構築され、GABA神経細胞はさらに多くのサブタイプに分かれている。近年我々が発見した投射軸索を持つ大脳皮質GABA神経細胞は、その多くがnNOS陽性細胞であった。nNOS陽性GABA神経細胞の数はGABA神経細胞の約1%、全体の0.2%を占めるにすぎず、同細胞の機能の研究を著しく難しくしている。同細胞の軸索の終始する相手の細胞を確認することが判れば、他の大脳新皮質の神経細胞とどの様に関わっているかが分かると期待している。それ故、我々はnNOS陽性GABA神経細胞で特異的にGFPを発現させるために、nNOS-Cre/tet-onトランスジェニックマウスを作成する計画をスタートした。nNOSは軸索伸長時発現し回路形成の調節に働いていると考えられている分子で、全ての興奮性神経細胞も生後2週目ぐらいまで発現している。それゆえ、単にnNOS-CreマウスとGFPレポーターマウスを掛け合わせると、ほとんど全ての細胞がGFP陽性となる。nNOS陽性GABA神軽細胞で特異的にGFPを発現させるためには、他の細胞の軸索伸長が終わった生後2週目以降にCreの発現誘導をかける必要性がある。Creの働きを時間的に操作するために、CreERを発現させてタモキシフェンで核内に導入しDNAの組み換えを起こさせる方法があるが、幼若な細胞でなければ組み替えはなかなか起こらない傾向がある。それ故今回は、tet-on systemを導入したマウスを作成してみた。
|