1.上衣細胞の極性形成過程の解析 (1)走査型電子顕微鏡によって上衣細胞の分化過程における形態変化を観察し、上衣細胞は生後直後には繊毛を持たず、生後一週間の間に極性を示す繊毛を伸長させることを明らかにした。 (2)繊毛基部およびゴルジ体マーカーによる脳室壁のホールマウント標本の染色を行い、繊毛の基部がまず上衣細胞表面全体に出現したのちに、前後極性を持つ分布へと変化することを見いだした。 (3)繊毛の基部の分布の変化を生きた標本で観察するため、繊毛基部に局在する蛋白質Centrin2とGFPの融合蛋白質および細胞境界に局在するZO1とGFPの融合蛋白質を発現するDNAをエレクトロポレーションにより生後2日後の脳室壁に導入した。生後5日において脳スライスを作製し、蛍光蛋白質の局在をタイムラプス撮影により観察した。その結果、繊毛基部の分布が時間経過とともに変化して極性を獲得することを見いだした 2.平面細胞極性コア遺伝子群の関与の解析:上衣細胞の極性を制御する因子として平面細胞極性コア遺伝子群が挙げられる。我々はこの遺伝子群のうちStrabismusが上衣細胞の分化過程において発現することをin situ hybridization法により見いだした。さらに抗Strabismus抗体によってStrabismusの細胞内局在を観察したところ、上衣細胞内で前後極性のある局在を示すことがわかった。この結果は、Strabismusが上衣細胞の前後極性形成に関与する可能性を示唆している。
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