研究概要 |
すでに開発したin vivo神経節gene silencing法の応用として、今年度はまず節状神経節におけるVGLUT1分子(SLC17A7)のノックダウンを試み、小胞内へのグルタミン酸取り込みを担う分子の発現阻害によって一次求心線維から孤束核2次ニューロンへの高頻度持続的伝達が障害されるという作業仮説の検証を試みた。予想に反し、節状神経節内のVGLUT1mRNA発現量は対VGLUT1分子siRNA導入によってのみならず、PBS導入群およびランダム配列siRNA導入群によっても有意に減少した。2007年にVGLUT1発現量が細胞の軽微な損傷などよって変化するという報告があったため、この非特異的な発現量の減少は電気穿孔法もしくは神経節周囲の手術操作によって生じていた可能性がある。そこで、ノックダウンの対象をP2X3サブユニソト分子(p2x3r)とし、同様に神経節にsiRNAを導入したところ、3種のsiRNAのいずれによっても選択的(PBSおよびrandom siRNA導入の影響はほとんどなし)かつ効率的な(いずれのsiRNAでも5-10%まで低下)mRNA量減少が生じ、さらに、導入11-15日後に行った免疫組織化学標識の結果、孤束核におけるP2X3サブユニット発現はsiRNA導入側特異的にほぼ消失していた。脳スライスにおいてシナプス前P2X受容体活性化によるグルタミン酸放出促進を観察したところ、siRNA導入側においてATPに反応するがα,β-methylene ATPに反応しないニューロンが認められた。以上の結果は、in vivo神経節gene silencing法によって、mRNA量、タンパク発現量、機能的表現型のすべてが効率的に修飾され、うる事実を示している。平成20年度以降、呼吸の化学応答、あるいは圧受容器反射に及ぼす影響をin vivoで観察する。
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