研究代表者はエチルニトロソウレアを変異原としてゼブラフィッシュに変異を導入して、オーソドックスな3世代スクリーニングを行い、ピンセットでつついた時に運動や行動に異常を示す変異体の単離を行い、刺激を与えてもほとんど動かない変異体を単離した(以下、これを単に変異体と呼ぶ)また、この変異体の責任遺伝子のマッピングを行い、変異が6番染色体上の50kbの領域にしぼられること、さらにその領域にある新規遺伝子SH3P1のイントロンのスプライシング認識部位に点変異があり、発現する際に選択的スプライシングに異常が生じて終止コドンができるために正常なタンパクが合成されないことを見出した。本研究はSH3P1の機能を解明することで、この変異体における運動異常のメカニズムを明らかにし、その知見のヒト疾患への応用を目指すものである。平成19年度はまず、電気生理実験を進め、パッチクランプで筋からの膜電位を測定した状態で水をかける触刺激を与えて運動を誘発し、運動時の筋電位変化を記録する実験を行った。刺激はシグナルとして感覚ニューロン→介在ニューロン(脳)→運動ニューロンを介して筋に伝えられ、正常個体の場合では30Hzの脱分極を筋で起こした。変異体でも30Hzの電位変化が観察されたことから、変異体では筋よりも上流、すなわち神経系は正常に機能していることが予想された。また、これは変異体が筋に異常を持つことを示唆するものでもある。実際にSH3P1のmRNA発現をin situ hybridizationで調べると、筋でシグナルが見られることが予想されるが、次にはこれを確認しなければならない。また、SH3P1を特異的に認識するモノクローナル抗体の作製をはじめており、これが完成すれば、筋に発現することが免疫染色により確認できると期待される。
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