パルボウイルスNSおよびEGFPを発現するレトロウイルスベクターをC57BL16マウス由来のES細胞に導入し、EGFPの発現量を指標にNS高発現クローン及び低発現クローンを得た。各細胞クローンについて、in vitro分化誘導により3胚葉への分化能力を比較検討したが、ES細胞の分化誘導は可能であったが、分化の程度を定量的に比較することが困難で再現性のある結果は、現在まで得られいない。一方、NSおよびEGFPを導入したTリンパ腫細胞(C57M(D)cell)では細胞のアポトーシス感受性の低下、細胞増殖性や腫瘍原性の低下が見られ、ES細胞の外胚葉系細胞の分化制御に関わる8MPのアンタゴニストとして作用するbmper遺伝子の制御領域でDNAメチル化が亢進し、それに伴うBMPERの発現抑制が認められた。しかし、bmperのノックダウンによりBMPERの発現を抑制した細胞クローンでは、C57NT(D)よりもアポトーシス感受性、細胞増殖性、腫瘍原性はいずれも亢進していた。 今後、NSを導入したES細胞で、アポトーシス感受性、細胞増殖性、腫瘍原性の亢進の有無を検討するとともに、BMPERの発現とbmper遺伝子DNAのメチル化の状況についても検討し、BMPERを介したBMP下流のSmadあるいはMPKシグナル伝達系へのNSの関与を明らかにし、パルボウイルス感染における病因因子としてのNSの機能を解明したい。
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