アポトーシスは生命維持にとって重要な機構であり、発生の過程に関与するだけでなく、癌や神経疾患などの様々な疾患にも関連している。アポトーシス誘導活性を増強させたアポトーシス関連遺伝子を特異的なプロモーターの制御下で発現させることで、生体内において不要な細胞を除去し疾患の治療に利用することが出来る可能性や特定の標的細胞を欠損させた病態モデル動物を作製できる可能性がある。我々はアポトーシス経路の上流に位置し、様々な刺激によりアポトーシスを誘導するFADD蛋白質に注目した。FADDはC末端側にDeath domain(DD)とN末端側にDeath effector domain(DED)を持ち、これらによってFasレセプター、カスパーゼ8と結合しDISCという複合体を形成することで、アポトーシス実行に関与している。DEDを二つと、バクテリオファージλの頭部蛋白質であり自己集合活性を持つことが知られているE蛋白質を融合した改変蛋白質(2DEDpIusE)と、DD、DEDを二つずつ融合させた改変蛋白質(2DED2DD)を作製し、発現誘導剤依存的に非常に強力なアポトーシスを誘導することができる系を開発した。また、NIH3T3細胞とHEK293細胞だけでなく、HeLa細胞、Saos2細胞、HepG2細胞等の様々な組織由来の細胞においても、これらの改変蛋白質が強力なアポトーシスの誘導活性を示すことを明らかにした。更に中程度のアポトーシス誘導活性を示す改変蛋白質(2DED2DD)の解析の過程で、通常アポトーシスは不可逆的に進行するといわれているにもかかわらず、一度アポトーシスの特徴であるブレッビングを起こし浮遊してきた細胞が、再付着し増殖するという現象を捉えることが出来た。この現象を詳しく解析することで、アポトーシスの不可逆的な臨界点の解明の手がかりを得ることが期待できる。
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