研究概要 |
本研究の目的は,分子スイッチをコートした磁気ビーズを細胞内に導入し,これを外部から磁場を印可することによって任意に操作し,細胞の仮足形成を任意に操作し,細胞運動を制御するところにある.まず,細胞内での磁気ビーズ操作に必要な磁気ピンセット装置の開発を行った。より自由度の高い操作を実現する為,電磁石駆動型の装置を開発し,電源のON/OFFによって磁場のコントロールが可能な系とした。局所的に高い磁束密度勾配を発生させるために,電磁石のコアとして高透磁率材料であるパーマロイを用い,先端を細く加工した。また,電磁コイル周囲にシリコーンチューブを巻き付け,冷却水を灌流することで発熱によるコアの変形および細胞に与える影響を緩和した.さらに電磁石をOFFにしたときに直ちに発生磁場が消失するように,コイルに瞬間的に逆方向の電流を流す脱磁回路を組み込んだ.このようにして作製した磁気ピンセット装置により細胞に接着させた磁気ビーズに約500pNまでの引張り力を負荷できることを確認した.次に細胞内に食作用によって導入した磁気ビーズを,実際に細胞内で空間的に操作することを試みた。磁気ピンセット装置を用いることで,細胞内に導入された複数個の磁気ビーズを任意の位置(細胞辺縁部)へと集積させることに成功した.共焦点レーザー顕微鏡を用いた三次元観察によって,ビーズ操作が細胞膜内で行われていることを確認した.また細胞内において磁気ビーズを集積した個所で細胞仮足形成が生じる現象が見られた.
|