研究概要 |
現代生活の運動頻度の減少や栄養の不足・偏りは,発育期の健全な骨成長を阻害して骨の易骨折性を招き,長期的には骨の成熟度を減じて将来の骨粗髪症発症リスクを増大させる.本研究では,栄養疫学調査からその骨形成効果(コラーゲン産生,骨基質へのカルシウム結合の促進)が期待できるビタミンK2(VK2)と適度な骨への力学的負荷に着目し,これらの骨形成促進作用について実験的検討を行なった. 生後4週齢のウィスターラット(♀)を,標準餌,VK2添加餌群に分け,両群とも左下腿に対し,断続的負荷-1Hz,ピーク荷重0.5kgfで20秒間,10秒の無負荷時間を挟んで18サイクルーを週3回の頻度で4週間与え,1週間の休止期間後,さらに同様の負荷を4週間与えた.VK2の一日の摂取量はkg体重あたり22mgであった.負荷実験終了時には血液サンプリングし,両肢の脛骨を摘出した.脛骨は近位骨幹端と骨幹部に切り分け,各々について,マイクロCTによる海綿骨形態計測,フーリエ変換赤外分光顕微鏡法による材料特性計測を行った. エンザイムイムノアッセイにより得られた血漿中のグラ化オステオカルシン濃度は,VK2群で有意に高く,VK2による骨基質へのカルシウム沈着の促進効果が示唆された.実際に,海綿骨骨梁の体積と体積率,骨梁幅はVK2群で増加し,骨の構造強度の増加が確認された.また,皮質骨のハイドロキシアパタイト結晶度もVK2群で有意に高く,VK2摂取による骨の成熟性の促進が明らかになった.しかしながら,両群とも左右の脛骨の形態,材料特性には有意な違いは見られず,本実験で与えた負荷では効果がないことが確認された.成長期の骨形成促進において,より効率的な負荷の必要性が窺われた.
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