研究概要 |
光増感剤と抗原を同時に樹状細胞に作用させ、エンドサイトース経路により細胞内に取り込ませた。光増感剤としては、685nmに最大吸収波長を有するデンドリマーフタロシアニン(DPc、分子量:4,903)を内包した高分子ミセルを利用した。DPc内包ミセルは、エンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれるが、この時、光照射を行うことによってDPcより産生される一重項酸素がエンドソーム膜に障害を与え、エンドソーム内の化合物(抗原)が細胞質内に放出される仕組みである。具体的には、免疫応答の標的分子となる抗原タンパク質と共にDPc内包ミセルを樹状細胞に取り込ませた後、光刺激を加えてエンドソームに貯留している抗原を細胞質へと放出させる。本来なら、大部分の抗原はMHCクラスII経路に入り、CD4陽性T細胞を活性化する。しかし、光刺激により細胞質内に放出された抗原は、小胞体内でMHCクラスI分子に結合し、細胞表面に提示され、CD8陽性T細胞を活性化することが可能になった。C57BL/6マウスの骨髄細胞をGM-CSFとIL-4の存在下で培養し、樹状細胞に分化させて実験に用いた。樹状細胞に抗原を導入し、OT-I細胞やOT-II細胞と共培養した場合に、どちらの細胞が反応するかを観察した。樹状細胞にOVAを取り込ませた後、OT-I細胞とOT-II細胞を反応させると、樹状細胞はOT-II細胞を刺激活性化することが可能であるが、OT-I細胞を刺激する効率は非常に低かった。一方、DPc内包ミセルと光刺激処理を行った樹状細胞は、CD8陽性のOT-I細胞を効率よく刺激することが可能であった。光刺激によるエンドソームのターゲッティング技術を、抗原提示細胞内でのMHCクラスI経路とクラスII経路のターゲッティングに応用し、クロスプレゼンテーション効率を改善し、免疫応答を増強することを明らかにした。
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