本研究の目的は細胞集団の改変である。実施計画では酸化亜鉛ナノロッドの適用を基本に、新規材料の応用を見込んだ。酸化亜鉛については、レーザー蒸着法を用いた自己組織化プロセスによるナノ1次元構造の作製を行い、作製条件を制御して、試料の配向性や形状の最適化を図った。特に、アルゴンガス雰囲気中で、高配向ロッドが成長することを見出した。これは、レーザー照射によって固体ターゲットから脱離する原子群が、不活性アルゴン原子との衝突を繰返すことにより、基板表面上でロッド成長核(クラスター)が安定に形成されるためだと考えられる。一方、新規材料として量産性に配慮し、軟質材料によるナノロッドを利用した細胞膜穿孔を試みた。これは電解エッチングによる自己組織化多孔質シリコン基板を鋳型に、光増感剤を分散したシリコーン樹脂(PDMS)で形状を転写し、剣山状のナノロッド構造体としたものである。この転写ナノロッドを細胞集団上に静置・加圧し、光増感剤を励起することで、付着性のラットPC12細胞、また浮遊性のマウス単核球の穿孔に成功した。 なお、実施計画では細胞膜穿孔部の形状最適化、次に穿孔体の集積化、最終的に集積型穿孔体の穿孔条件の最適化の順としたが、集積化しうる穿孔部形状が素材により制約を受けるため、まずは集積化を優先したものである。併せて穿孔条件の最適化を迅速に進めるべく、膜穿孔に必要な光照射時間と照射位置調整、細胞撮影を自動化するシステムを構築した。
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