平成19年度は、まず、がん特異的基質の開発に関しては、既に見出していたプロテインキナーゼCα(PKCα)に特異的な基質に対し、種々のがんでの反応性を確認し、この基質が普遍的にがん特異性を有することを見出し、Arphatomegaと命名した。また、がん転移に重要なRhoキナーゼ特異的な基質の探索を行い、これまで不可能とされていたROCK 1とROCK2(Rhoキナーゼ)をそれぞれ見分ける事の出来る基質配列を見出した。今後、この配列を元に、さらに実際の細胞内の活性に応答できるかどうかを確認し、改良していく。また、がん特異的なキャリヤーの開発としては、肝がんを対象にしたB型肝炎ウイルス由来のエンベロップタンパクを提示したリポソームにPKCα応答型遺伝子制御システムを内包すること成功した。このキャリヤーは、正常ヒト肝実質培養細胞では、細胞に取り込まれるものの遺伝子の発現は認められなかったのに対し、ヒト肝がん培養細胞においては遺伝子の顕著な発現が認められた。さらに、ヌードマウスに本キャリヤーを局注したところ、ヒト大腸上皮がんでは遺伝子は発現しなかったのに対し、ヒト肝がん由来の細胞では遺伝子の発現が認められ、肝臓細胞の特異性は確保され、さらにPKCα特異性とのダブルセキュリティーが返られる事が分かった。また、PKCα応答型遺伝子制御システムによりルシフェラーゼ遺伝子をマウスB16メラノーマ細胞にエレクトロポーレーションにより導入を試みたところ、がん組織内で遺伝子の発現が認められた。一方、正常皮下組織に同様に投与した場合にはまったく発現は認められなかった。
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