研究課題
本研究では、生体に投与可能な抗癌剤内包マイクロカプセルを用い、粒子線照射によるブラッグピークを利用してカプセルを破壊し、内包抗癌剤を長時間持続的にリリースさせる薬剤伝達方法を開発する。その結果、腫瘍領域にのみ高濃度の薬剤分布と陽子線治療による相乗的治療効果を低副作用で得ることを目的とする。今年度は研究計画最終年度であり、抗癌剤内包マイクロカプセルを用いて、マウスレベルによる治療実験を実施した。NFSaマウス線維肉腫細胞をC3Hマウスの後脚に移植し、直径10mm程度の腫瘍が形成された時点で、マウスにシスプラチンを内包したカプセルを投与した。カプセル径は現状で平均数十μm程度であるため、腫瘍部へ直接投与した。腫瘍部に対して15mm幅の陽子線拡大ブラッグピークを一致させて陽子線30Gyの単回照射を行った。腫瘍内でのシスプラチン放出と腫瘍細胞への取り込みを確認するために、治療後1時間または6時間後に腫瘍部を摘出し、両腫瘍サンプルをPIXE元素分析法に供した。腫瘍組織内の元素分析では、硝酸灰化した腫瘍サンプルを数ミリ径の陽子線で照射して特性X線測定による通常PIXE分析法を用い、シスプラチンの構成元素である白金元素が、両サンプルから約2ppm検出された。一方、細胞内の白金元素分布を得るため、厚さ10μmの腫瘍組織切片に対して、1μm径の陽子線を走査し照射するマイクロPIXE分析を行ったが、白金元素が微量であったため、細胞核への白金集積を確認するまでには至らなかった。一方、高分解能PET装置を用いて、18FDGを投与したマウスを測定した結果、治療後の腫瘍内糖代謝レヴェルの低下が認められ、一定の治療効果を確認した。
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Proceedings of the 16th Pacific Basin Nuclear Conference (16PBNC), Aomori, Japan, Oct. 13-18, 2008 1
ページ: 16-1378-1-6
International Journal of PIXE 18
ページ: 253-260