研究概要 |
在宅生活への適応ストラテジー探求の研究と,住環境評価の開発研究を実施した.適応ストラテジーの研究では,在宅の脳卒中者(60歳台の男性)2名に半構成的インタビューを行い,地域での生活のための適応ストラテジーを抽出した.分析の結果,退職後の在宅の男性脳卒中者ではセルフケアの自立,家事の支援,社会的交流のための移動手段の獲得,レジャーの再構築が意味ある生活を地域で送るための支援では重要であることが示唆された.本研究の結果から,在宅生活支援目的の訪問リハでは,セルフケア,家事,社会的交流,レジャーといった活動参加の水準のゴール設定が重要であることが示唆された.住環境評価の研究では,Westmead Home Safety Assessment(以下,WeHSA)の検査者用の研修教材を作成して,評価の信頼性を検証した.日本には住環境整備で専門職が用いる標準化された評価がないので,海外で検者間信頼性が検証された本評価を採用した.原著者の許可を得て,12項目の軽微な変更を加えた.65歳以上の転倒リスクあり(Functional Balance Scale得点45点以下)の者20名の自宅を2名の作業療法士が訪問して,独立に評定した.対象は平均年齢80.3±7.9歳,女性が13名,屋内独歩の者が16名であった.71項目中50項目(70%)では,中程度から良好以上の信頼性(κ>0.4)が認められた(p<0.05).2項目の信頼性は不良であった.19項目については被検者を増やして,さらに検証する必要性を認めた.以上の研究結果を踏まえて,最終年度は以下の研究を行う予定である.1.日本の在宅の虚弱高齢者に適用する住環境評価の標準化の手続きを進め,検査者用の研修教材を充実させる.2.COPM(活動参加の水準のゴール設定のための評価)とWeHSA(住環境評価)を用いた脳卒中者への在宅生活支援チーム・アプローチとしての訪問リハプログラムを実践して,半構成的手法で成果を評価する.3.2の結果を踏まえて,本プログラムの成果評価指標を決定する.
|