1.筋電気刺激によるCKCでの二関節筋機能の解析:健常成人男性19名を対象に椅子座位の状態で大腿直筋、内・外側広筋(以下、広筋群)、内・外側ハムストリング(以下、ハムストリング)にそれぞれ電気刺激を行い足部出力と出力の方向、下肢関節モーメントを計測した。足部出力は広筋群刺激時が他の2群と比較して約2倍であり有意に大きな値を示した。足部出力の方向は床反力ベクトルが広筋群刺激時には股関節と膝関節の中間を、大腿直筋刺激時には股関節の後方を、ハムストリング刺激時には膝関節のすぐ後方を通っていた。これらの結果より、単関節筋である広筋群は出力の大きさに影響するのに対して、二関節筋である大腿直筋とハムストリングは出力の方向に関与していると考えられる。ハムストリングの膝伸展作用については、ハムストリング電気刺激時には股関節レバーアームが膝関節より勝るため股関節伸展が起こり、結果として膝関節は伸展したと考えられる。 2.二関節筋の抑制現象を逆手に利用した下肢トレーニング法の開発:大腿直筋前面に全長に渡って十分な弾力性を持たせたスパッツ状の下肢筋力増強用着衣を開発した。この着衣を突っ張ってCKC運動を行うと、ハムストリングが活性化するだけでなく、下肢全体の筋群がバランスよく活性化される。今回試作した下肢筋力増強用着衣は着用するだけで、歩行や立ち上がりなどの日常生活の中で運動を行うことが可能である。 3.二関節筋の抑制現象を利用したリハビリテーションの開発:ピラティスリフォーマーを用いたCKCトレーニングについてその効果を検討した。インストラクター資格を持つ健常成人男性をリフォーマー上に背臥位に固定し右足で床面に垂直に設置したフットプレートを押す運動を行わせた。表面筋電図では大腿四頭筋とハムストリングのバランス良い収縮が認められたが、膝が伸展するに従いハムストリングの放電が強くなった。
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