本研究は、"文献学的研究成果が映像人類学的に説明できるか"という試みである。具体的には、研究代表者である酒井が十数年来行なってきた刀剣の思想に関する文献学的成果を、映像も含めていかに社会に還元するかという試みである。 本年度はます、刀剣の思想に関する学術的成果を、一般向けに『剣と心』(仮題)として書き直し、出版する準備を進めた。内容的には、「武と剣」「三種の神器と剣」「信仰宗教と剣」「神話のなかの剣」「剣の思想の源流」に焦点をあてた。原稿は完成し、現在出版社と発刊に向けて作業中である。また、これに伴う画像収集を行なった。さらに本プロジェクトにおいては、現代に生きる刀剣思想を、現代刀工に焦点を当てることにより浮き彫りにすべく作業を進めてきている。具体的には、故宮入行平刀匠(人間国宝)の高弟である藤安将平刀匠に関する画像・動画を収集した。福島県山中の鍛刀場で、玉鋼から一本の日本刀ができるまでをトータルで撮影した非常に貴重な映像を収集することに成功した。これにはNPO団体である映像記録の協力をえて、非常にレベルの高い映像を収集することができた。20年度以降、この材料をつかって、現代刀剣界最高峰にある刀匠のもつ刀剣にたいする思想を十分に盛り込みつつ、従来の日本刀剣思想の中に位置付けつけながら、一つの動画作品を作成する予定である。
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