本研究は、研究代表者である酒井が十数年にわたり、文献学的手法により明らかにしてきた刀剣の思想についての知見を、映像的に表現し社会に還元することを目的としたものである。 昨年度までに、既に、現代に生きる刀剣思想を、現代刀工に焦点を当てることにより浮き彫りにすべく、故宮入行平刀匠(人間国宝)の高弟である藤安将平刀匠に関する画像・動画を収集し、編集作業を完了している。これについては、映像記録(NPO法人)の協力を得て、非常に高い撮影・編集技術をもって「刀剣にこめられた日本人の心~刀匠藤安将平~」と題する映像を完成することができた。 本年度は、当プロジェクトにおける研究成果を発表し、社会に還元する段階である。 まず、研究成果物DVDを、ドイツ(フランクフルト)においてヘッセン州剣道連盟が主催するセミナーで、「日本の霊剣思想」(Spiritual Sword Ideal in Japan)と題して発表した。 また、日本学術振興会「ひらめきときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~KAKEN」に応募採択され、「深いぞ 凄いぞ 日本の武道~文化としての剣道の魅力~」というテーマで、本プロジェクトの研究成果を中学生を対象として還元する事業を行った。 両企画とも大きな反響があり、高い評価を得ている。そもそも本研究は、人文学的手法により得られた研究成果を社会に還元しようとする際、十分な理解をえることが困難であることから発想したものであった。このことからすると、最終研究成果物に対する今回の反響と評価から、三年にわたる本プロジェクトの目的は十分に果たせたものと考える。
|