本研究の第一年次は、作成した(Umenoら、2000)葛藤価値検査における「理由づけ分析」の診断基準を作成することにある。具体的には、小学校4学年の20学級(男子:294名、女子:257名、計551名)を対象に、ジレンマ課題に対する理由づけ調査を行った。すなわち、ソフトボール試合を題材に、9回最後の攻撃に自分のチームメイトのミスで相手チームに点が入り、逆転負けしてしまうという状況下で、自分より腕力があり日頃からチームを引っ張ってきたピッチャーがミスをしたチームメイトをなじる場面における判断である。理由づけ分析基準の作成に当たっては、小学校教員でなおかつ体育学会関連の学会活動を継続的に展開させている3名教員と本申請者である梅野の計4名により、分類作業を行った。このとき、コールバークの道徳性発達段階の定義およびハーバーマスの相互行為の段階とその社会的パースペクティブの定義に従って、「第1段階」「第2段階」「第3段階」「エクセレンス」の4つの発達段階に相当する文例を収集した。 得られた結果の大要は、以下のとおりである。 (1)葛藤価値検査の結果と理由づけの診断基準による分析結果との対応を検討した結果、葛藤価値検査におけるジレンマ1では「エクセレンス」を除く、すべての発達段階において80%以上の一致率が認められた。ジレンマ2では、「第1段階」で80%以上の一致率が、「第2段階」及び「第3段階」では70%台の一致率が得られた。しかし、「エクセレンス」では、ジレンマ1の場合と同様に一致率の低い結果であった。 (2)ボールゲーム指導先導校の刈った唐価値検査の結果と同様の結果を示した学校の児童の理由づけ内容を語彙分析した結果、前者の児童の方が後者の児童に比して顕著な相違が認められ、理由づけ分析の併用による判定が望ましいことが確かめられた。 これらのことから、今回作成した「理由づけ分析」の診断基準は一応妥当なものと考えられた。
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