研究概要 |
本研究は、コールバーグの道徳性発達理論とハーバーマスの行為発達理論を主軸に作成した「体育授業の場における葛藤価値検査(Umeno,K.et.al.2001.)」を用いて、小学校4年生児童(157名)を対象に、体育授業に対する愛好的態度の高い児童とそうでない児童との比較から、作成した児童の理由づけを評価する診断基準も含めて葛藤価値検査の妥当性を検討した。まず、「よろこび」「評価」「価値」の3つの尺度からなる態度測定法と葛藤価値検査の診断結果との関係を検討した結果、「評価」尺度と「価値」尺度において有意な対応関係が認められ、体育授業に対する愛好度が高いと葛藤価値判断力も高いとする関係が導き出された。また、各尺度を構成している項目点と葛藤価値検査の診断結果との関係を検討した結果、「評価」尺度においては、運動が上手くなるための主体的な学び方に関する項目との間に有意な関係が認められた。同様にして「価値」尺度では、体育授業の場で発生した学習集団のトラブルに関する項目との間に有意な関係が認められた。 以上の結果より、児童から見た授業評価である態度得点と葛藤価値検査における診断結果との間には密接な結びつきがあるものと考えられ、「体育の授業の場における葛藤価値検査」の診断結果は、体育授業改善の指標になり得る可能性の高いことが推察された。
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