昨年度の研究結果より、「体育授業の場における葛藤価値検査」の診断結果は、体育授業改善の指標になり得る可能性の高いことが推察された。とりわけ、「体育授業に対する価値観」が形成される小学4年生において両者の密接度の高いことが示されたことは、この時期に葛藤内容を多分に含んだ運動教材を導入すれば、彼らの道徳性の発達に大きく貢献するものと考えられる。そこで今年度は、小学校4学年3学級を対象に「スポーツか、暴力か」の葛藤を含みもった「スポーツチャンバラ」を実践し、単元前後の比較より葛藤価値判断力がどのように変容するのかについて検討した。 その結果、4段階からなる葛藤価値検査の診断結果に対して、χ2検定を施したところ、単元前と単元後の間に有意差は認められなかった。しかし、S3段階とS2段階を境に、EX-S3段階とS2-S1段階とに大別した場合、単元後に葛藤価値判断力が有意に高まるとする結果が得られた。これには、学習者行動分析における「従事」の「間接的活動」が関係していることが認められ、スポーツチャンバラの審判活動に積極的に関与できるかどうかが葛藤価値判断力に影響を及ぼすものと考えられた。 以上のことから、スポーツチャンバラにおける審判活動が積極的に展開できれば、葛藤価値判断力が高まることが認められるとともに、葛藤価値検査の有用性が確かめられた。
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