本研究は、他者と直接接触する対面型コミュニケーションの絶対量の減少が、生活場面において他者の動作の意図を読み取る能力に影響を与えているのではないか、との仮説のもとで、携帯メールやインターネットによる非対面型コミュニケーションの従事時間と動作読み取り能力との関連を検証することを目的としている。今年度は、文献から現代のコミュニケーション関係の問題点を検討し、質問紙を作成した。質問紙は、フェースシート(年齢・性別、生活時間の配分、携帯メール・インターネットの従事時間)と他者の動作に対する意識(辻(1993)の他者意識尺度を用いた他者への関心度尺度と5種類の場面設定に基づいた他者の動作の解釈に関する質問)で構成した。作成した質問紙により、18-22歳の大学生男女132名を対象とした非対面型コミュニケーション依存度の実態調査と他者動作に対する意識の予備調査を行なった。携帯電話やパソコンによるメール、ブログやmixiなど不特定多数に向けての情報発信、セカンドライフなど3Dインターネットの利用実態は、携帯メールが利用率100%で、mixi56.1%、パソコンによるメール54.5%、ブログ12.9%、セカンドライフ0.8%であった。1日の利用時間の平均は平日75.6分、休日92.3分で、余暇時間に占める割合は概ね20%であった。非対面型コミュニケーション接触量の絶対値である1日の利用時間が30分以下を少群、60分を超えると多群として各項目を比較したところ、一元配置の分散分析で「顔を知らないが連絡する友人がいる」「他者の心の動きをいつも分析している」「すぐ近くにいる友人ともメールでやり取りすることが多い」「傘をさしながら狭い道ですれ違う時相手側に傘を傾ける」等の項目で有意差がみられた。予備調査の結果から依存度の調査の質問項目を修正し、他者動作の理解に関する場面設定の項目を増やすこととした。
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