地域住民がイニシアティブをとるような、住民参加型の地域スポーツを構想する上で、現実に実践されている具体的事例からヒントを得る目的で、フィールドワークを実施した。 フィールドとして措定したのは、山形県庄内地方であり、一つには、酒田市の光丘博物館ならびに鶴岡市の郷土資料で、歴史的あるいは行政的な資料を収集した。これは歴史社会的背景を把握する上で有効であった。第二に本研究の中心的な作業として、 「総合型地域スポーツ・クラブ」を訪問し、なるべくこれを立体的に把握するべくインテンシブな聞き取りを行った。具体的には、酒田市に設立されていたクラブから、希望が丘体育文化振興会、六華スポーツクラブ、鳥海ふれあいスポーツクラブ、東禅寺スポーツクラブ、やわたY-Yクラブ、ひらた目ん玉スポーツクラブ、みなスポ松山などであり、同市内で設立されたクラブをほぼ網羅している。決論的に現段階でこれらの聞き取りを要約すれば、(1)すべてのクラブがそれぞれの歴史的背景をもとにユニークな原理で活動を展開しているという「個別性」が際立っていることである。このことから「総合型」として一括して論ずることには慎重であらねばならず、(2)今後とも各クラブの個性の分析を地域の条件との関連において捉える必要があることが痛感された。 理論的な彫琢も本研究の眼目であったが、20年度は英国の研究者である、イアン・ヘンリー(ラフバラ大学教授)を訪問し、スポーツ政策研究をより広い視点から、あるいはグローバルな理論的枠組みにおいて検討するうえで、有意義な意見交換を行った。
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