本研究の第一の着眼点は、被験者に非接触で人体計測を行うことが可能な3次元人体計測装置を開発し、人体計測法に対して新しい視点を提供することであった。さらに単に身体計測にとどまらず、時系列に伴う人体の形状の縦断的変化(たとえば、加齢に伴う姿勢の変化など)や安静時代謝と関係から体表面積測定やビデオ分析時の基礎的基準点となる各体節の体積や重心や慣性モーメントの推定を行い、生体のかたちと機能を関連付けることを目的とした。本研究では以下の2点に関する研究を実施した。(1)三次元人体計測データの健康医・科学およびスポーツ科学への応用 三次元データにカラー情報のマッピングを実行して表示するとともに、自動認識された頭頂点などにランドマークを自動配置した。また、被計測者に貼り付けた外付けランドマーク位置を自動検出し、これらのマークを関節中心点として人体計測法に基づく計測部位の正確な位置決めを行い、各四肢の長さや周囲計の計測を自動で行った。その際各周径囲の計測では、各体節長の相対的部位地点を自動認識し、かつその部位での体分節の長軸に直行する面の外周とした。さらに体表面積の算出(基礎代謝や安静時代謝との関連、健康科学)や各身体セグメントの体積、部分重心点や関係モーメントなどの算出(スポーツバイオメカニクスへの応用)、スポーツ特異的な姿勢分析(例えば競泳のストリームライン姿勢での揚力、抗力推定などの流体力学的応用)などをもとめた。(2)発育発達による"体のかたち"の変化を三次元的に提示(健康医・科学的研究成果)子どもかたら年寄りまでのからだの形状変化を捉えることにより、発育や加齢に伴う人体の形の変化を定量化することを可能とした。さらに脊柱の湾曲形状なども計測可能となり、今後は、姿勢と発育・加齢研究あるいは臨床的には腰痛、糖尿病あるいは肥満に関する人体形状のより客観的評価が可能になると考えられる。
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