本研究は、球技の選手が敵選手を「かわす」ためにステップを踏むと予測した位置からディフェンスまでの距離が、「ディフェンス選手をかわす」ためのランニングスピードおよびランニングフォームにどのような影響を及ぼすのかをトレーニング効果の視点から検討を行った。本研究では、光刺激装置(敵選手が左右の移動のみを行う)をディフェンスの選手に想定して実験を進めた。ステップを踏むと予測した位置(光電管設置位置)から光刺激装置までの距離を2m、3m、4mの3種類に設定した。被験者は男子大学バスケットボール選手15名で、各選手に3種類に設定したそれぞれの距離でのダッシュを5回ずつ行わせた。また全ての選手に、15mの直線上に1m間隔で設置した10ヶのコーンをかわすジグザク走トレーニングを週あたり4日の頻度で10回ずつ4ヶ月間実施させた。そして光刺激装置をかわし走り抜ける時間(最大10m幅)を測定し、トレーニング開始時から1ヶ月毎にトレーニング効果を観察した。また全ての動作をビデオ撮影し、動作分析からランニング速度および重心高を算出した。その結果、ステップを踏むと予測した位置から光刺激装置までの距離が2mの時、光電管設置位置を通過する時の速度が4.850m/sから「かわす」ためのステップ動作時のランニング速度が2.336m/sへと低下(ブレーキカ)した(52%の減少)。しかし4ヵ月間のジグザク走トレーニングによって、約38%の速度低下までに抑えることができた。しかし、4mの時は、トレーニング前後とも約15%のランニング走度の低下であり、ジグザク走トレーニングの効果は認められなかった。以上の結果から、ジグザク走トレーニングは狭い間隔での(3m以内)かわす動作に効果があるが、4m以上の間隔でのかわす動作には効果がなく、直線ランニング速度が大きく影響を及ぼしていることが明らかとなった。
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