2年間の研究期間内に、疲労やストレスによるパフォーマンスの低下が、脳のどの領域の働きの変化と関連するのかを、非侵襲的脳機能イメージング手法を用いた基礎研究によって明らかにする。さらに、認知心理学的研究を追加することによって、健常成人の疲労やストレスによる認知機能の変化を定量的に評価可能なシステムを開発することが目的である。ストレス負荷に伴う疲労により、最も高次な認知機能(環境に対応して適切な情報処理を行うほか、注意機能や思考、中央実行機能など)を司っている背外側前頭連合野(ブロードマン46野)の機能の低下が生じることを証明するために、15名の右利き健常若年被験者に15分間の連続足し算を午前9時から午後8時まで毎時継続して行わせ、各連続足し算終了直後に数種類の認知機能検査(作動記憶(ワーキングメモリー)課題とストループ課題を、脳全体の機能を評価可能とされている、WAIS-Rの1項目である、Digit-symbol課題)を行い、その変化を計測した。その結果、連続足し算による精神疲労によって、実行機能が低下し、実行機能を必要とする認知機能検査成績ガ低下することを確認した。この疲労の効果は、食事休憩によって回復することも明らかにした。また右利き健常若年被験者を対象として、連続足し算遂行時の脳活動を機能的MRIによって計測し、背外側前頭前野を含む多くの連合野が活性化することを証明した。今後は、精神的、および肉体的ストレス負荷による脳活動の変化を機能的MRIおよび機能的NILSによって計測を行う予定である。
|