研究概要 |
近年,血管内皮細胞機能検査として,血管の駆血解放後におこる拡張反応flow mediated dilation(FMD)の測定が非侵襲的機能評価方法でありNO依存性の高い検査法として注目されているが,交感神経活動の影響を含めたデータの再現性に問題が残されている。これらの問題を考慮した機器peripheral arterial tonometry(商品名End-PAT2000)〔Itamar Medical Ltd. Caesarea, Israel〕による興味深い報告がある。その中でMayo Clinicにおける94例の軽症冠動脈硬化症に関するスタディとその後の検証データによると,RH-PAT index 1.67が80%以上の感度と特異度により冠動脈内皮細胞機能障害のカットオフ値となるとされている。 今回私たちは,医療機関に勤務する健常な職員を対象に本機器を用いて検査を実施したところ,76人中26人がRH-PAT indexは1.67未満であった。すなわち被験者の3分の1が,検診結果は特に異常なしの結果が出ているにもかかわらず,冠動脈内皮機能障害の可能性が高いということである。更に,RH-PAT index<1.67であった23人に対しておよそ6か月後に再検査を行なったところ,18人中13人が同様の結果(RH-PAT index<1.67)であった。 この結果より,検査日時が勤務終了直後や直前の時間帯であったため,健常人であっても心身の疲労の度合いによって血管内皮細胞機能は疲弊している者がおり,一時的に内皮機能障害状態にあるのではないかと考察した。しかし,複数回測定したところ2回ともRH-PAT index<1.67であった者の割合が72.2%であったことから,この状態が長期に持続すれば,永続的な冠動脈内皮機能障害関連疾患になる可能性が考えられる。
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