研究概要 |
本研究では大転子及び仙骨を保護するエアバッグ式ヒッププロテクターを開発することを目的とした。最終年度では、エアバッグトリガー閾値および、転倒方向と外傷の関係について検討した。まず、エアバッグ開放のトリガーとして腰部加速度の有効性を検証するために、不安定台からの前後および左右方向の転倒動作時の3次元腰部加速度(右大転子部)を計測した。いずれの転倒方向の最大加速度、最大振幅とも同程度の値を示した。また、各転倒方向のx,y,およびz軸の加速度間の相関はいずれも有意であった(最大加速度:r=0.56-0.78,最大振幅:r=0.57-0.84,p<0.05)。T字台牽引時に転倒したケースと代償的ステップにより転倒を回避したケースの加速度を比較した結果、転倒したケースの加速度が大きい傾向にあった。しかし、前方向の場合、加速度に顕著な差は認められなかった。現在、設計しているエアバッグ式ヒッププロテクターはエアバッグ開放までに約0.2秒要するため、開放トリガーはそれより前に転倒を感知しなければならない。各転倒方向において、x,y,z軸のいずれかの最大加速度もしくは最大振幅のなかで最も早く出現するものを採用していくと着床前0.430~0.775秒の間であることが確認され、最大加速度、最大振幅はエアバッグ開放のトリガーとなりうることが示唆された。しかしながら、転倒時の最大加速度や最大振幅は個人差が大きく、開放閾値の設定にはさらなる検証が必要と判断された。次に、在宅高齢者1955名を対象に転倒発生時の外傷の有無と転倒方向について調査した。過去1年間で転倒した高齢者は386名(20.9%)で、そのうち257名(66.6%)が何らかの外傷を負い、37名(9.6%)が骨折した。転倒による外傷の有無と転倒の原因および転倒した方向に関する度数に有意差は認められなかった。一方で、転倒の方向と転倒の原因および外傷部位間に有意な関係が認められ(ψ=0.49と0.32)、骨折は側方の転倒において多く発生する傾向にあった。したがって、エアバッグ式ヒッピプロテクターは側方の転倒に対する防御を重視する必要性が示唆された。
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