研究概要 |
本研究の目的は、細胞の増殖と分化、細胞骨格の制御、免疫反応の調節、アポトーシスなど多くの細胞機能に関与する細胞内信号伝達分子であるProtein Kinase C(PKC)に着目し、骨格筋の再生過程における発現の局在および機能を解明することで、加齢における筋萎縮メカニズムを解明することである。10週齢のWistar系ラットを使用し、前脛骨筋(TA)に塩酸ブピバカインを注入して筋損傷モデルを作製した。損傷後1,2,4,6,10および14日目に損傷側のTAを摘出し、免疫組織化学法、Western blot法、RT-PCR法により各サンプルの解析を行った。さらに、再生過程におけるPKCθの局在を明らかにするため、蛍光二重染色を行った。Western blot法では、筋肉内のPKCθ蛋白は損傷後早期から減少し、2日目から徐々に増加した。PKCθmRNAは損傷後4日目から6日目にかけて増加を認めた。蛍光染色法において、PKCθはC-Metで標識した静止期の筋衛星細胞に局在しているが、BrdUで標識した増殖期の筋衛星細胞にはほとんど認めなかった。分化期の筋衛星細胞においては、myogenin陽性の筋衛星細胞の約半分にPKCθの発現を認めるのみであったが、Pax7およびTGF-βとPKCθは共在している傾向があった。 以上から、PKCθは再生骨格筋においてTGF-βと同様に筋衛星細胞の分化を抑制し、また静止期の筋衛星細胞の維持に重要な役割を果たしている可能性が示唆され、加齢における筋萎縮メカニズムの解明につながると考えた。引き続き、本研究を進め、さらなるメカニズム解明を目指す。
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