初年度は、簡易刺激によるカルタ選手の脳内情報処理に関する研究を行った。 対象は、大学生カルタ部員30名と、カルタ部以外の大学生12人(対照群)、および最近カルタを始めたばかりの中学生カルタ部員25人である。 聴覚odd ball課題による事象関連電位を記録しながら、同時に近赤外線トポグラフィー法で脳血流の変化を測定した。 P300潜時は、大学カルタ群と対照群の間に有意差を認めなかった。音声刺激後、ボタン押しまでの潜時は、対照群の500±150msecに比して、大学カルタ群で200±120msecと、大学カルタ群で有意に短かった。大学カルタ群は海馬の記憶をたどることなく、課題を遂行している事が示唆された。 大学カルタ群の67%で、非標的刺激に対しても、P300様の深い陽性波が300msec付近に出現した。大学カルタ群が、「お手つき」に注意しながら課題を遂行している事がわかった。 対照では、課題遂行中、優位半球聴覚野の血流が有意に増加したが、大学カルタ群では優位半球、前運動野において、音刺激後の血流増加の潜時が有意に短縮した。 大学カルタ群は、聴覚odd ball課題を、海馬の記憶をたどることなく、優位半球前運動野の血流増加潜時を早めることで、対照に比して早いボタン押しを実現していると考えられた。 同様の所見は、カルタをはじめて問もない中学カルタ群でも認められ、カルタ選手特有の情報処理過程は、訓練を通して得られたものであるか、このような運動特性を持つ個体がカルタと言う競技にのめりこんでいくのか、結論できなかった。 次年度は、負荷法の難易度を上げ、今回結論できなかった疑問を解決したいと考えている。
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