研究概要 |
目的: 本研究は、高齢者におけるライフコーダによって年間を通して評価された日常の身体活動が、部位別動脈硬化度に及ぼす影響について検討した。 方法: 対象は65〜84歳の健康な日本人高齢者198名(男性89名,女性109名)であった。対象者はライフコーダを1年間装着し、年間を通した1日当たりの平均歩数と3METs以上での身体活動時間を算出した。また、1年後、血圧脈波検査装置を用いて、部位別の動脈硬化度(上腕-足首:baPWV、心臓-大腿部:hfPWV、心臓-上腕部:hbPWV、大腿部-足首:faPWV)を測定した。 結果: 性、年齢、血圧を補正したbaPWVとhfPWVは、平均歩数および3METs以上での身体活動時間の両者との間に有意な負の相関関係を示した。また、hcPWVは、日常歩数との間に負の相関関係を示した。一方、hbPWVとfaPWVは、日常の身体活動との間に有意な関係はみられなかった。すなわち、baPWVとhfPWVは日常歩数および3METs以上での身体活動時間が多いほど低値を示し、高齢者においては、一定の身体活動量(6,500歩/日)および質(3METs強度以上の身体活動時間15分/日)を確保することにより、加齢に伴う大動脈伸展性の低下が抑制される可能性が示唆された。 結論: 本研究結果は、高齢者における日常の身体活動は、動脈硬化の予防に有益であり、その効果は、抹消動脈よりも中枢動脈で顕著である可能性が示唆された。
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