研究概要 |
酢酸菌(Acetobactor属)をココナッツジュースで培養して生産されるセルロース繊維(バクテリアセルロース)は「ナタデココ」として知られるほか,食品以外にも利用されているが,その用途は未だ狭い。自然界から微生物によって生産され,廃棄後には再び自然界に完全還元されるこのようなバイオマス素材の用途拡大を推進し,地球環境破壊を食い止める一助とするため,被服素材(不織布)として「着る」ための調製法の検討・改良を実施し,その性能を総合評価することを目的として,研究を進めている。 平成19年度は,主として酢酸菌の培養条件および乾燥条件を検討した。得られたバクテリアセルロースシートは,フィブリル構造を観察し,被服としての要求性能について,引っ張り試験,耐洗濯性試験の他,新規購入した摩擦堅牢度試験機によって耐久性能を測定した。シートの物性は最初の乾燥条件によって異なった。それぞれのシートの物性は,最初の1000回の摩擦試験によって柔軟性などの高まりが認められたが,それ以降の摩擦による変化はほとんど無く,10万回の摩擦試験後も耐久性を保持した。 これらの結果から,シートを凍結乾燥すると,クッション性が向上すること,また靴の中敷や衣服の芯地として使用可能であると判断できた。洗濯後の乾燥方法には検討の余地があるが,20年度はこれと併せて着用感の検討を行っていきたい。 なお,19年度の成果については,20年8月末の第17回繊維連合研究発表会での研究発表も検討している。
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