研究概要 |
本研究は,カキ殻を基材にしたバイオフィルムの形成過程や高機能性へ変換する過程を詳細に解析したうえで,最適なバイオフィルムを構築し,家庭で簡単に扱える生活排水浄化システムを開発することを目的としている。初年度はバイオフィルム形成能の検討を蛍光顕微鏡および電顕観察,ATP量による細菌数測定を中心に行った。その結果,1.細菌の大きさや形状にかかわらず,カキ殻粒子の大きさは,0.1〜0.5mm程度が細菌の付着,増殖に適していた。また,緩やかな振とう(50rpm)培養が最適であった。2.数種の細菌を増殖させたところ,短桿形の菌の付着量,増殖量が大きかった。走査電顕による観察から,カキ殻の微細な構造に入り込める大きさであった。3.蛍光顕微鏡による観察では,環境負荷を与えると付着菌の抵抗力が増し,バイオフィルムを安定して形成した。4.環境負荷を繰り返すことにより,層が厚くなり,きのこ状の高機能バイオフィルムを形成した。平成19年度末に共焦点レーザー顕微鏡が導入されたことにより,蛍光顕微鏡観察では不可能であったバイオフィルムの鮮明な三次元構造からより詳しい情報を得ることができ,高機能性バイオフィルムを定量的に評価できるようになった。高機能バイオフィルムの微生物群集の解析もPCR-DGGE法で継続して進めている。以上,バイオフィルムを安定して形成する条件,高機能性を保持する条件を確立し,形成のメカニズムの解明をはかることができ,初年度の目的を達成することができた。
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