研究概要 |
本研究は,カキ殻を基材にしたバイオフィルムの形成過程や高機能性へ変換する過程を詳細に解析したうえで,最適なバイオフィルムを構築し,家庭で簡単に扱える生活排水浄化システムを開発することを目的としている。平成20年度はさらに発展させて,共焦点レーザー顕微鏡観察を行い,バイオフィルムの三次元構造解析による定量化を試みた。施行錯誤の結果,リアルタイムにバイオフィルムの形成状態を把握することができるようになった。さらに,多糖類の分泌とバイオフィルム形成との関係及び環境変化(温度,pH)による影響を共焦点レーザー顕微鏡観察で明らかにした。多糖類分泌はバイオフィルム形成の骨格をなしていること,温度も50度付近では枯草菌が芽胞形成により休止状態であることが分かった。プロテアーゼの分泌は主にセリンプロテアーゼが多いことが,ゼラチンザイモグラフィーによる解析で明らかになった。さらにバイオフィルム形成の成熟期に最もプロテアーゼ活性が高いことが明らかになった。牛血清アルブミンを負荷させた場合,プロテアーゼが活性化されるばかりでなく,新たなプロテアーゼを誘導合成し分泌させることが示唆された(論文投稿中)。でんぷんの分解能も高いが,脂質の分解はやや劣っていることから,次年度は脂質分解能に優れた枯草菌の導入を検討している。最適なバイオフィルム形成が確立されたことから,リサイクル可能なカセット様の簡易浄化装置を試作している。最終年度は,装置制作の試行錯誤を行い,さらに水質検査,毒性検査,カキ殻砕の再利用について検討する。これらの成果は,KAKENHIひらめき☆ときめきサイエンス「地球の生物循環を支えている目に見えない小さな生き物達の世界を探ろう」(2008年8月20日,県立広島大学)でも公表した。
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