本年度は、新聞記事およびWeb上の情報を中心に全国各地の墓園建設を巡る反対運動の実態を整理し、さらに過年度中に収集した調査データ(定量的データ)の分析を中心におこなった。墓園建設に対する反対運動が掲載された新聞記事は少なからず存在し、ペット霊園の建設を巡る紛争まで起こっていることが確認された。また、紛争が発生している地域乙は幅広く、全国各地で発生していることが分かった。 一方、Web上の情報によると、広島県広島市において墓園(納骨堂含む)建設および計画の差し止めを求める陳情が、2008年度に数件も提出されていたことが確認された。以上のことから、墓園の建設を巡る紛争が発生しており、近隣住民にとって墓園は迷惑施設と認知されていることが考えられる。 ただし、たとえ自宅近隣に墓園が建設されると困るとはいえ、葬送のひとつの形態である墓に対するニーズは絶えない。よって、墓園は地域全体の視点に立つと必要であるが、一個人の立場からすると不要というジレンマ事態に陥っていることが分かる。このジレンマを解消するには、墓園と地域住民が共存する術を探ることが必要である。そこで、住民(広島市市民)が墓園建設に対してどのようなリスク対策を求めているかについて分析をおこなった。分析の結果、住民は防犯カメラの設置や墓園への人々の立ち入時間の制限を求めていた。したがって、リスク対策を恒常的に果たしていくことが、墓園と近隣住民の共存をはかるうえで重要と考えられる。
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