生体異物を無毒化し排泄する機構として、肝臓における第一相解毒代謝および第二相解毒代謝が重要な役割を担っている。このうち、第二相解毒代謝では、第一相解毒代謝で水酸化された化合物がグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)等の抱合酵素によって、より水溶化されて排出されるため、真の解毒代謝とも呼ばれている。この第二相解毒酵素を誘導する物質として、アブラナ科野菜に含まれるイソチオシアネート類が知られている。しかし、これまでの研究では生の場合のGST誘導活性については調べられているものの調理操作を行った場合のGST誘導活性については検討されていない。そこで本研究では、市販されているアブラナ科野菜に、湯通し、茹で、すりおろしといった一般的な調理操作を施した後、エタノール抽出し、ラット正常肝由来RL34細胞を用いて、GST誘導活性誘導能について検討した。 非加熱の葉わさび、花わさび、はなっこりー、菜の花は高いGST誘導活性を示した。葉わさび、花わさびは、湯通しとして90℃の湯を用いた場合では非加熱に比べGST誘導活性は低下したが、80℃の湯を用いた場合では高まる傾向がみられた。ブロッコリースプラウトについては、湯通し後GST誘導活性が高まる傾向がみられた。カイワレ大根については、湯通し後もGST誘導活性は非加熱の場合とほとんど変わらず高いままであった。わさび根茎すりおろしについては、辛味を強めるとされるレモン汁、ミロシナーゼの活性を高めるとされるアスコルビン酸を添加してもGST誘導活性に変化はみられなかった。すりおろし器の差異を検討したところ、さめ皮のすりおろし器はセラミック製に比べ高いGST誘導活性を示し、伝統的に使われている調理器具の有効性が確認できた。 以上のことから、アブラナ科野菜に調理を施すことは、肝解毒酵素誘導という点からも有効であると考えられた。
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