今年度は、研究計画に基づいて、まず、鰹だしの後鼻腔経由のにおい特性を分析するために、現有のにおい嗅ぎ装置付GCのにおい嗅ぎ装置部分に着脱式の部品を取り付けて後鼻腔経由のにおいのGC-O分析(GC-RO分析)を行い、鰹だし(荒節だし・本枯節だし)の後鼻腔経由のにおいプロファイルの作成を行った。前鼻腔経由のにおいと比較したところ、前鼻腔、後鼻腔経由それぞれ一方でのみで認識されるにおいがあった。さらに、同じRTであっても、前鼻腔、後鼻腔経由によって異なるにおいとして感じられるものもあった。また、前鼻腔経由では、本枯節だしの方が荒節だしよりもにおいの種類は多かったものの、総じてにおい強度は、本枯節だしよりも荒節だしの方が強かったが、この関係は、後鼻腔経由のにおいの場合には逆転した。 次に、官能評価によって各鰹だしの後鼻腔経由のにおいの減塩効果についても検討した。インピンジャー内にだしを入れ保温し、ヘッドスペースに溜まった香気成分を捕集管の外口からストローで口腔内へ送りこんだ。被験者はこのストローに加えてもう1本のストローを加えてもらい、そのストローの先には食塩水をセットした。すなわち、被験者が息を吸うと、だしのにおいと食塩水がともに口腔内に流入することになる。この装置を使って、被験者には、2種のだしのにおいを嗅ぎながら0.68〜0.93%の5段階濃度の食塩水とにおいの付加のない0.80%食塩水の塩味強度を比較してもらった。その結果をプロビット法により解析したところ、前鼻腔経由のにおいに比べてより強い塩味増強傾向は認められたが有意差はなかった。しかし、嗜好調査においては、においの付加によって、濃度の低い食塩水への嗜好性が上昇した。だしのにおいは、前鼻腔、後鼻腔経由ともにおいしさ向上に寄与していることが明らかとなった。
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