昨年度、自作の装置を用いて、鰹だしの後鼻腔経由のにおいによる低塩食品のおいしさ向上効果を確認した。今年度この装置の妥当性を検討することを研究目標の1つに挙げていたが、この装置では被験者への負担が大きいことが発覚し改良が望まれた。そこで、昨年度は2本のストローを用いて、におい試料と味試料を別々に被験者の口腔内に導入していたところを、T字管を用いて、T字管の左端をにおい試料の入ったインビンジャーに、下端を味試料の入ったカップにそれぞれ連結した。その結果、右端から吸い込むと、におい試料の香気成分と味試料を同時に口腔内に導入することが可能になった。 そこで、20歳代の女性を被験者として、この装置を用いて、におい刺激として鰹だしの香気成分を含む水蒸気を口腔内に導入しつつ蒸留水を飲んでもらい、7項目について7点評価法で評価してもらった。その結果を、鰹だしを飲んでもらった場合と比較したところ、鰹だしの後鼻腔経由のにおいは、鰹だしの"渋味・苦味"の発現に大きく寄与し、"塩味""うま味"の誘起に関与していることが示唆された。また、鰹だしのにおいを後鼻腔経由で付与した場合、鰹だしそのものを直接飲んだ場合に比べて、だしらしさは劣るものの、好き嫌いに有意差は無かった。 この装置で十分に鰹だしの香気成分を口腔内に導入できることがわかったため、各鰹だしの後鼻腔経由のにおいの減塩効果についての官能評価を再試した。その結果、昨年同様、鰹だしの後鼻腔経由のにおいには、低塩味食品のおいしさを向上することが確認できた。
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