研究概要 |
本研究の目的は,人と一緒に食事を取りながら話す「テーブルトーク」が人に与える効果を社会学,食生活学,ヒューマンインタフェースから多面的に分析し,その構造を明らかにすることである.今年度は,人の食事中のコミュニケーションの分析に必要な,食事映像の収録を行い,分析用の映像データを作成した.また,これを用いて予備分析を実施した.まず,3組の友人同士のテーブルトークを複数カメラにより撮影し,映像を編集してマルチ画面の120分の分析用映像を作成した.映像スクリプトデータを基に食事動作,視線・表情の表出,発話,およびそれらの行動の順序を調査してテーブルトークの構造を分析する準備を整えた.次に,作成した映像データから予備分析を行い,食事の動作が,スタンバイ(箸や食器を持っていない状態),レディ(食べずに食器を持っている状態),ゴー(食べている状態)からなり,この食事動作状態と発話/非発話動作が干渉していることを見出した.また食事動作が発話交替に影響していることも観察し,これらは状態遷移モデルとして表せる可能性を見出した、観察の結果,人はテーブルトークにおいて会話と食べ物に注意を向けながら,さらに相手への気遣いをしているなど様々な要素が関係していると考えられ,今後これらを仮説として検証を進める.分析結果は,日本家政学会大会に発表することが決定している.次に,映像による遠隔テレダイニングの分析の準備のため,食事のない映像会話のコミュニケーションの会話分祈を実施した.視線一致のシステムが不一致のシステムと比べて円滑な会話の交替に寄与していることがわかった.また,観察されたテーブルトークの状態遷移に基づき自律的に動作する擬人化エージェントの食事シーンの生成の環境を構築し,予備的に映像を生成した.今後,視線一致映像会話システムを用いた食事の分析を行う.
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