野菜や果物の摂取量と骨粗しょう症の罹患率には負の相関がみられることが疫学調査により報告されており、いくつかの野菜やハーブにおいては骨吸収抑制作用が動物実験を用いた研究で報告されている。本研究では、私たち日本人が日常よく食する野菜の骨代謝、とくに骨形成に対する作用について動物系および培養細胞系を用いて調べ、野菜の積極的摂取による骨粗しょう症の予防効果について明らかにすることを目的とした。培養細胞系については今年度も引き続きマウス由来の骨芽細胞様細胞を用いて、昨年度動物実験に用いたキャベツ、玉ねぎ、にんじん、しょうがなどの10種の野菜の溶媒抽出物の骨形成促進効果について検討した。細胞増殖については顕著な増殖促進を示す野菜は認められなかった。骨形成に関わる因子に及ぼす影響については小松菜、玉ねぎなどにおいて骨形成を促進する傾向が認められた。またその効果はすでに知られている骨形成促進因子であるビタミンCなどと協調して増進される傾向であった。さらに玉ねぎの成分のひとつであるケルセチンについても検討したところ、骨形成促進効果が認められた。今後さらに詳細な検討が必要である。また、動物系の実験については、卵巣摘出手術を施したマウス(骨粗しょう症モデル)を用いて野菜の成分のひとつであるビタミンCを飲料水に添加し、ビタミンCを積極的に摂取した場合の骨代謝への影響を調べた。ビタミンCの積極的摂取により骨重量が改善する傾向がわずかながら認められた。今後実験条件を変えてさらに検討を行う必要があると考えられた。
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