研究概要 |
納豆菌が産生するビタミンK結合因子(KBF)は疎水性炭素鎖を持つ物質と特異的に結合し、ミセル様構造を形成するため、脂溶性ビタミンと結合し可溶化する場合がある。一方、脂溶性ビタミンは脂質の少ない食事では吸収されにくいことは良く知られているが、納豆粘性物質を含んだ食事を摂取することで脂溶性ビタミンの吸収促進効果があると報告されている。本年度は、昨年度より、やや脂肪含量の高い低脂肪食を作成して、納豆に含まれる水溶性成分であるKBFによるビタミンK1とβ-カロテンの吸収促進効果を健常者において検証した。[方法]精製したKBFを食事(脂肪エネルギー比10%)に用いる代わりに、KBFを含む納豆粘性物質(納豆19g相当分)を添加して試験食とした。対照食には、アルコールで脱脂したKBFを含まない粘性物質を使用した。健常女性(21〜23歳)7名を対象として対照食摂取実験を行い、4週間後に同一被験者で試験食摂取実験を実施した。KBFの効果は摂取0,4,6時間後の血中脂溶性ビタミン濃度の測定し、摂取前後で比較して評価した。[結果]血清ビタミンK_1濃度は、試験食摂取時では4時間後に上昇したが、試験食と対照食について濃度変化を比べると、試験食でやや大きかった。血清MK-7濃度は、試験食と対照食摂取後の濃度で大きな差を見ることができず、昨年の結果と大きく異なっていた。これは、納豆粘性物質の調製法の違いによるかもしれない。血清カロテン濃度は、試験食、対照食ともに食事摂取後4時間で上昇したが、試験食と対照食摂取後の濃度には、有意な差を見ることができなかった。中性脂肪、総コレステロール、LDLコレステロール、リン脂質の血清濃度変化についても、いずれも有意差を確認できなかった。[結論]健康若年女性を対照とした臨床試験において、低脂質食摂取の場合、ビタミンKlとβ-カロテンの吸収がKBFにより有意に促進されなかった。
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