本研究は、日韓のNGO関係者や研究者らが、地元の市民と共に干潟の科学的調査を継続的に行いつつ、調査研究のテクニックをすべて市民に伝えて、将来的には、地元住民が「市民科学者」として独自に質の高いデータを収集するようになることを目指している。 2007年度は、8月24日から9月3日までの日程で、韓国中西部セマングム干拓堤防内側と外側の海域において、現地調査および環境教育活動を実施した。本地域では、セマングム市民生態調査団が過去4年間にわたり定期的に調査を実施しており、合同で調査活動を展開することにより、多くの人たちが干潟調査に触れる機会を作ることができた。助成金で購入したEkman-Birge採泥器・水質測定器などの調査機器類を現地に運び込んだ。そして、干拓堤防内側海域において、漁船を借りて潮下帯での採泥・採水調査を実施し、堆積物の粒度分析、塩分や溶存酸素濃度などの水質分析、そして堆積物に含まれる底生生物の定量調査を実施した。また、干潟・浅海域において底生生物の定性・定量調査を実演してみせ、調査の注意点や使用する器具類の操作方法などについて説明した。さらに、購入した採泥器や生物同定用図鑑などを現地の舒川環境運動連合事務室に常備することで、今後も市民生態調査団が自発的に干潟調査をできる環境を整備することができた。その他、研究協力者らの活動により、文化人類学および人文地理学の立場から、セマングム地域の干潟を生活の糧として暮らしてきた人々の変化を地域研究によって分析することができ、セマングム市民生態調査団メンバーらと調査手法やデータなどを共有することができた。
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