本研究は、日韓のNGO関係者や研究者らが、地元の市民と共に干潟の科学的調査を継続的に行いつつ、調査研究のテクニックをすべて市民に伝えて、将来的には、地元住民が「市民科学者」として独自に質の高いデータを収集するようになることを目指している。 2008年度は、4月1日から4月11日までの日程で、韓国南西部木浦周辺海域において、現地調査および環境教育活動を実施した。本地域では、木浦市を拠点とする市民生態調査団と合同で調査活動を展開することにより、多くの人たちが干潟調査に触れる機会を作ることができた。さらに、7月8日から18日までの日程で、セマングム海域と韓国東海岸の現地調査および環境教育活動を実施した。セマングム海域では、干拓堤防内側海域において、漁船を借りて潮下帯での採泥・採水調査を実施し、堆積物の粒度分析、塩分や溶存酸素濃度などの水質分析、そして堆積物に含まれる底生生物の定量調査を実施した。また、韓国東海岸では、潟湖に生息する底生生物や人々の暮らしの様子を科学的に記録すると共に、これらの活動を通して、湿地の保全に関心をもつ地元の市民を増やす努力を行った。2年間の萌芽研究実施の結果として、日本と韓国各地の市民調査グループとの連携が完成し、市民と研究者による共同研究テーマを設定して、科学研究費補助金の基盤研究への申請を行い、3年間の研究が採択された。
|