メンデルが遺伝法則の発見に用いたエンドウ(Pisum sativum)の7つの形質の中から、遺伝子レベルまで解析が終わっている形質について、野生型遺伝子と突然変異型遺伝子の分子レベルの違いを、高等学校の理科実験室のレベルで視覚化できる方法の確立を目標とする。平成20年度は、豆の「まる」と「しわ」を司るRとr遺伝子座について、PCR解析の方法の改良を中心に検討した。R(RUGOSUS)は澱粉分枝酵素(Starch Branching Enzyme II)をコードしており、劣性遺伝子座rでは0.8kbのトランスポゾンの断片が挿入されているため遺伝子が分断されて機能しないが、Rとrの遺伝子構造の違いについて、DNAを抽出し、特異的primerを用いてPCR増幅を行い、0.8kbのDNAの長さの違いをアガロース電気泳動法により視覚化する方法の検討を行った。DNAの抽出、PCR増幅、アガロース電気泳動、DNAバンドの視覚化について、高等学校の理科実験室で行うことができるように、実験手法の選択と条件検討などの改良を行った。その結果、平成19年度までにRRとrrの各ホモ個体においては、明瞭に区別できる方法を確立していたが、しかし、竜のヘテロ個体においては、RRとrrの単純な足し算の結果とはならず、異なるバンドパターンが得られた。これは、RRとrrのDNAをPCR前に混合しても同じ結果になることから、PCR増幅の際に生じる干渉作用のようなものが生じるためと考えられた。本年度は、0.8kbの塩基配列の決定を試みる他、様々な解決法を探ったが、この現象の解決はできなかった。そのため現在、0.8kbの違いの視覚化に拘ることなく、単純にPCR産物の有無という形でのプロトコールの完成を目指しており、この形で最終版する計画である。
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