研究概要 |
本年度の研究実績の概要は,以下の通りである. 1.先駆的な事例等に関する海外実地調査及び資料の分析 主にイギリスとノルウェーの野外センターや科学系博物館における教育ポリシー及び教育プログラムについて調査した。イギリスでは,Field Studies Counciが実施している教員向けの自然理解指導プログラムについて,担当者へのインタビューと文献資料収集を行い,科学的手法による自然学習の手法を明らかにした。また,ノルウェー・オスロ大学においてROSE(the Relevance of Science Education)研究の第一人者であるスベイン教授から国際比較調査における日本固有の科学観について意見を得た。 2.科学教育における日本型キー・コンピテンシーの暫定的なモデル構築 初年度の研究成果と上記1の知見に基づいて,科学教育における日本型キー・コンピテンシーの暫定的なモデルを構築し,その体系化を試みた。日本の科学教育における優れた点を日本型キー・コンピテンシーとして抽出するための理論的枠組みについては,学習科学における学習の転移に関する最近の議論を踏まえ,Bransford& Schwartzの「将来の学習のための準備」という概念が理論的枠組みの有力な候補の一つになることを明らかにした。また,学習者が他者と協力し問題を解決する力を育成することを目差した協同学習モデルが日本型キー・コンピテンシーに密接に関連しているという観点から,授業実践を詳細に検討するとともに,コンピテンシーの候補をナラティブな形式で記載することを試み,その結果は,マンガという形式で表現することで抽出可能であることを提案した。キー・コンピテンシーとしてのテクノロジ活用能力と情報活用能力については,携帯端末の学習利用を通して育成可能であることの検証を行った。 これらの成果は,国際ワークショップ(International Workshop on Mobile and Ubiquitous Learning Environments)や,国内学会で発表するとともに,論文として公刊した。
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