市販の化学肥料や乾燥昆布などを用いて放射線教育に使用できる自然放射能線源の「開発と教育実践」を念頭におき、平成21年度は、外寸280mm×310mmのプレートに直径80mmのカリウム線源を埋め込んで汚染検査実習用教材を製作し、性能評価を実施した。また化学肥料から出ている放射線の原因はカリウムであることを理解するための実習方法を考案した。さらに初めての試みとして土壌を材料にした線源製作を試みた。 こうした自然放射能線源の製作に加え、本研究の大きな目標である教育現場への普及活動の一環として、第46回アイソトープ・放射線研究発表会(東京)や日本放射線安全管理学会第8回学術大会(長崎)などで発表するほか、放射線取扱主任者部会設立50周年記念大会では、一般来場者や主任者部会会員を対象に2日間にわたって自然放射能線源のデモンストレーションを実施し、さらに土岐市プラズマ研究会の依頼で、地元の教育委員会職員や中学、高校の先生を対象に自然放射能線源による放射線源教育について、講演と実演を行った。そのほか、科学技術館(東京)のスタッフや放射線専門メーカーからの問い合わせなどにも対応して、自然放射能線源の普及に努めた。 将来の日本にとって原子力エネルギーの利用は不可欠ですが、多くの国民は原子力利用にともなう放射線や放射能に対し、必要以上に大きな不安を抱いています。その原因のひとつは放射線教育不足からくる誤解にあります。しかしながら最近学習指導要領が改訂され、平成23年度から中学校において放射線の安全と利用が取り扱われることになりました。このような教育現場において、本研究で開発した自然放射能線源は大いに役に立つと考えています。自然放射能線源は日用品や食物を材料にしているため、放射線関係法律の規制を受けずに、親しみを感じながら安全に使用できるからです。そのため今後、いろいろな放射線教育現場での利用が期待されます。
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