本研究では、小学生の野外学習を支援するSketchMapと呼ばれるシステムを構築した。SketchMapは、GPS機能を持ったタブレットPCを用いて、地図を作成しながら実世界の情報を書き込むことが出来るツールである。例えば、理科の授業で用いれば、植生の様子を地図に書き込むという活動に利用できる。提案システムには、画像、映像、音声を取得するためのデバイスを備えている。従って、野外学習を通して誰もが簡単に複数メディアを統合的に利用した地図を作成することができる。 今年度は、提案システムの設計を、柏市内の小学校の教員と共同を進めた。特に子どもにとって分かりやすいユーザインタフェイスデザインについて、プロトタイプシステムを構築しながら設計と開発を行った。構築したプロトタイプシステムを用いて、小学生約80人が参加した実証実験を実施した。本実験では、通学路の安全を子どもたち自身がSketchMapを用いつつ地図を作成するという活動を通して確認した。さらに、作成した地図をwebを介して、他の子どもたち、あるいは地域の人々と共有することを目指した。実験の結果、SketchMapを用いた学習では、子どもたちの動機付けを高めることが出来ること、子どもたちが容易に地図を作成できることが示唆された。一方、子どもたちが作成した地図を地域コミュニティで共有し、安全意識を高めるという活動に生かす試みについては、まだ十分な成果を挙げていない。今後はシステムを介した非同期的な協調作業の促進という視点から、さらに研究を進展させる予定である。
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