研究概要 |
平成20年度に実施した,高齢者に対する年度を通じたコンピュータのモニタリングと,インターネットを介した学習を通じ,操作上問題が生じる部分として,ネットワーク利用時の双方向的な面における操作の困難さが抽出された.これはコンピュータの習熟が進んだ高齢者であっても生じる傾向を示している.ネットワーク利用以前の段階で,スタンドアロン利用におけるキーボード操作等についてはワープロの使用等により十分習熟しているにもかかわらず,WWWによるポータルサイト等へのログインにおいて要求されるIDおよびパスワードの入力や,サイト検索において必要となる検索ワードの入力等について困難を訴える場合が多いことがわかった.操作性向上を目的とした機能制限は,アプリケーションのレベルではなく,入力に関するインターフェイスレベルにおいて必要であることがわかった点に意義があるといえる. また,前年度までの研究において示された,入力デバイスの一つであるマウス操作において,自然発生的に生じる手首の回転運動を検知するジャイロセンサーを具備したデバイスを作成した.このジャイロマウスを用いてポインティング課題を高齢者と若年者の両方について課したところ,操作上の精度は通常のマウスと比較して低くなるが,高齢者の場合は低下の度合いが小さい傾向を示した.ただ実験中の被験者からは,新規デバイスは難しいといった発話もあったことから,被験者によっては困難度に対する主観的な評価と操作結果が必ずしも一致しないことがあった.この実験から,自然発生的に生じる手首の回転運動の積極的な利用が,規準となる固定点または固定面のない状態では操作に不安感を発生させる場合があるため,操作量に一定の基準を設ける必要があることが示唆されたことは,新規デバイスの開発において重要性を帯びているということができる.
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