ネクロマスプールがどれだけの量の炭素をどれだけの期間にわたって蓄積できるのかについて調べるために、本年度は筑波大学菅平高原実験センターのアカマツ林及び針広混交林において、粗大木質リター(CWD)プールとその年間の分解呼吸フラックスの推定方法について検討した。まずライントランセクトを設置して森林構造とCWDプール(現存量)の定量を試みた。調査区内の地上部にある直径5cm以上のCWDをすべてマッピングして、体積と仮比重を調べることによってプール量を推定した。アカマツ林の地上部バイオマスが42.8トンC ha^<-1>で、CWDプールは4.0トンC ha^<-1>(倒木が2.04、立ち枯れが1.96)であった。混交林では地上部バイオマスが89.2トンC ha^<-1>で、CWDプールは1.1トンC ha^<-1>(倒木が0.25、立ち枯れが0.87)であった。混交林ではバイオマスはアカマツ林の約2倍あるが、ネクロマスプールは3分の1以下でしかなかった。 一方で、CWDからの分解フラックス(R_<CWD>)を測定するためのチャンバーを開発し、CWDの分解呼吸による炭素放出フラックスを推定した。CWDは分解が進むほど仮比重が小さくなり、含水量が高くなる傾向があった。RCWDは各分解段階のサンプルを野外で切り出して、一日野外に放置した後にチャンバー内に入れて分解呼吸速度を測定した。その結果、R_<CWD>は気温と仮比重及びCWD含水量に影響する土壌水分量の関数として表すことができ、森林全体では014トンC ha^<-1>y^<-1>の炭素がCWDから放出されると推定された。この森林では、CWDプールは立ち枯れ量が倒木量を上回っているが、分解呼吸フラックスは倒木から0.071トンC ha^<-1>y^<-1>、立ち枯れから0.069トンC ha^<-1>y^<-1>とほぼ等しい値となった。
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